田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(160)英国民の「ノー」は世界の流れ
先週は英国の「EU離脱」が世界的な話題でした。私は、英国の国民投票では離脱派が勝つと確信していましたので、直前に、世界的に株価が持ち直したのが不思議でした。おそらく知恵者がデマ情報を流して儲けたのでしょう。
私の確信は単純な理由からです。世論調査では半々で、調査によっては勝ち負けが逆でした。それだけ僅差なのに、残留が多い若者は投票率が低く、離脱派の高齢者は投票率が高いのです。実際の投票になれば離脱派が有利です。また、背景として、世界的に民族独立、自決の大きな流れがあります。
EU(欧州連合)はもともと経済の共同から始まり、政治に広がりました。中心はドイツとフランスで、後発組の英国は影響力が制限されています。しかし、何だかんだと共通通貨ユーロを避け、ポンドを捨てませんでした。欧州大陸からわずかに海を隔てた英国はEUにとってわずかながらも異質の国でもあり続けてきました。
英国民の一番の抵抗はEUの移民政策といわれます。給料の安い移民に仕事を奪われ、英国人の失業者が増え、所得格差が拡大しているそうです。EUの方針や規制によって英国独自の政策が難しくなっています。若者は生まれたときからの欧州人としても、栄光の大英帝国を知る高齢者は英国の没落を実感しているはずです。不満がたまっていくのは当然でしょう。「G7」は先進7カ国の首脳会議ですが、先の伊勢志摩サミットの正式メンバーは、7カ国の7人以外にEUの2人が加わり、計9人でした。
EUは言語も民族も異なる国々なのに、最終的には1つの国を目指しています。しかし、美しい理想とは裏腹に、アフリカもアジアも東欧も中東も、言語や民族ごとに別の国に分かれようと戦っています。EUはその流れに逆行しており、むしろ今回の英国の選択こそ世界の潮流だといえます。
グローバル化、は寡占を目指す大企業の方向です。後進国の安い労働力を使って高い利潤を確保し、合併・吸収で際限なく販売網の巨大化をくり返し、格差社会を拡大しています。EUはいわばその国版のようなもの、ともいえます。英国民の「ノー」はグローバル企業社会への抵抗、とも取れます。