田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(148)保育所増は望ましいものの
孫ができるとしばしば保育所が話題になります。住まい近くに保育所があるかどうか。両親が働いている場合、片親の場合は不可欠ですし、できれば保育所に預けたい、と思う専業主婦も多いようです。でも、最近はネットで沸騰したように、保育所に入れないから仕事に就けない、といったケースもよく聞きます。いわゆる「待機児童」問題です。
2001年に小泉首相が「待機児童ゼロ作戦」を宣言しました。その成果なのか、保育所の定員は01年の193万人が14年には226万人と、33万人も増えました。少子化で子どもが極端に増えているわけではないのに足りません。なぜなのでしょうか。
根本には若者の貧困化がうかがえます。派遣や非正規雇用が増え、収入が減り、共働きが普通になりました。一番の希望は、広さや保育士数など国の基準を満たし、国や自治体の補助金の多い市町村や社会福祉法人立の認可保育所です。
国や都道府県の補助金予算には限りがあり、保育士も不足です。3月18日の『朝日新聞』によると、保育所で働く保育士は約41万人(13年)で、08年から4万人増えていますが、保育所は約3万カ所(15年)で6000カ所増。保育所25%増に対し、保育士は11%増にとどまっています。
保育士不足の原因は低い給与、その原因は国が決める認可保育所の保育料の公定価格が低いせいです。「子どもは何より大事だから」と、その価格を大幅に上げればいいわけですが、国家財政はすでに巨額赤字です。介護職員の低賃金・人手不足、病院勤務医師の過密労働も同様、公的価格である介護料、医療費が低いために起きていますが、それらは放置しておいていいかとの問題も出そうです。
国の基準からすれば、0歳児の親の3人に1人、1~2歳児の親の6人に1人が保育士として働けば解決します。「ええ~っ、低い給料できつい仕事なんかバカバカしい」と皆が拒否すれば、どうにもならないことになります。
保育所を増やせば子どもを大切にすることになるのでしょうか。今年1月の日本看護協会シンポジウムを思い出しました。「子どもの心の健全な発育のために、一時期までは母親や祖母、少なくとも大人の決まった養護者が不可欠です。仕事としての保育士は決して親の代わりにはなりません」と、木下勝之・日本産婦人科医会会長が話されていました。