田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(147)子どもたちはなぜ自殺するのか
広島県府中市で昨年12月、自殺した中学三年生の男子生徒の件でもう1つ思うのは、このごろの中学生、時には小学生の自殺の多さです。
『読売新聞』3月18日夕刊に「中高生の自殺343人」との見出し記事が載りました。内閣府と警察庁による2015年の自殺状況のまとめです。全国で2万4025人は6年連続の減少ながら、中高生は現在の集計法になった07年以降では最多とのことです。
発表の元資料の多くは年齢区分で、生徒や学生は「19歳以下」(529人)に含まれています。その内訳では小学生は6人、中学生102人、高校生241人、大学生379人と、年齢が上がるほど増えていきます。小・中学生108人のうち78人(72%)が男児です。
「19歳以下」まとめての自殺原因は、学校(36%)、健康(22%)、家庭(16%)関係の順でした。それ以上のデータはないのですが、常識的に考えて、学校関係は、年齢が進むと学業不振や進路の悩みが中心で、小・中学生は友だち関係、いじめが多いのではないでしょうか。10年には群馬県で母親がフィリピン人の小学6年女児が自殺して大きな問題になりましたし、名古屋市や長崎県、沖縄県などで小・中学生の男児の自殺が話題になりました。原因はいずれもいじめでしたが、当初、学校は否定していたと思います。
思い起こせば、私が子どものころから、いじめはありました。しかし、自殺は聞いたことがありません。昔は学級だけでなく、家庭、近所のお兄さん、お姉さんなどいくつもの場がありました。ところが、今は安全重視から近所の子ども同士でさえ公園で一緒に遊ばせません。友だちの範囲は極端に狭まり、学級仲間から外れると存在の場がなくなってしまいます。そのうえ、成長につれ、家庭も温かい場でなくなります。大学までの長い道。受験に活路を見出す子どもはよいとして、そうでない子どもは悲惨です。
子どもたちがはまっているゲームやビデオの世界では戦い・殺し合いが常態化しています。リセットすれば元通りになる世界が、生や死の現実感を薄めている気がしないでもありません。両親や祖父母、友人を殺すことが自分の人生をどう変えるのかを理解しないままの衝動的な犯罪も増えました。家庭も学校も社会も長く子どもたちを放置してきたツケが回ってきているのでしょう。