田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(146)信じられない中学生自殺事件
エエーッと驚く、信じられないような事件が毎週のように起きています。昨年12月、広島県府中市で自殺した中学三年生の話は、今の学校の先生方がいかに無責任で、子どもたちのことを全く考えていないかを赤裸々に示しています。
自殺の原因は、学校が親に対し、生徒が志望していた私立高校へ推薦できないと伝えたことだと考えられています。推薦できない理由は、生徒が1年生の時にしたとされる万引きのせい。ところが、実は万引きをしたのは別の生徒で、学校側の資料の間違いだったというから、何とも無茶苦茶な話です。
新聞やテレビの報道によると、店から複数の生徒の万引き通報を受けた教諭が生徒指導部の教諭に生徒の名字を伝えた時に間違えたのがそもそも。指導部の教諭はそれをパソコンに記録しました。驚くことにその間違いはわかっていたのです。先生方が集まった指導会議で間違いが指摘され、手元の資料は訂正されましたが、大元のパソコンデータはなぜかそのままになっていました。もう1つ不思議なのは、万引きを疑われた生徒に何の指導も注意もなかった様子です。しっかりした生徒だったとのいうことですから、もし、それがあれば、本人が「それは僕ではありません」と否定したはずです。特別な指導がなかったというのは、この中学では当時、万引きなどは大したことではないとの認識があったのかも知れません。
ところが、突然、校長の方針が厳しくなり、今年から、非行をした生徒は校長の推薦を出さないことになり、1年生の時の万引きも重視されました。担任教諭は本人に5回も面談し、記録にある万引きの確認をし、学校の方針を伝えましたが、生徒ははっきり否定しなかったというのです。しかも、面談は廊下での立ち話でした。このような重要な内容を立ち話ですませ、しかも、強い否定がなければ認めたと教諭が信じたのも不思議です。2年前の指導会議に出た教諭が学校に1人もいなかったとは思えません。各教諭は職員会議で話し合うこともなかったのでしょう。
「万引き生徒は推薦外」は私立高校側からの要求でなかったのでしょう。事件後、校長の厳格方針は撤回されたそうです。非行を改める教育的指導はなく、非行歴だけが他校より厳格、という学校の目的は何なのでしょうか。