医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2016年2月15日

(142)客の安全は無視、廃棄食品流用

 廃棄されたはずの冷凍ビーフカツが市中に出回っていた事件が表ざたになったのは今年1月13日でした。それから1カ月で事態はどんどん広がりました。「食の安全」は消費者の関心事であり、食品を扱っている業者はまったく無関心です。
 カレーチェーンの「壱番屋」は昨年9月、プラスチック片が混じった疑いのあるビーフカツ約4万枚を愛知県の産業廃棄物処理業者「ダイコー」に廃棄を依頼しました。「ダイコー」は7千枚を堆肥にしましたが、残りは岐阜県の「みのりフーズ」など複数の卸業者に食品として転売しました。愛知県と名古屋市の調査ではスーパー7店で売られ、名古屋市内だけでも17カ所で惣菜に使われていました。
 「壱番屋」の廃棄カツは以前にも同じルートで市場に出ていました。岐阜県は「みのりフーズ」が「ダイコー」から買った108商品を調査中ですが、1月20日時点で、イオン、ローソンなどのスーパー、ニチレイフーズ、マルコメなどの廃棄食品が含まれていたと発表しています。おそらくは「ダイコー」に依頼された廃棄食品の多くが廃棄されずに格安で市場に逆戻りしていたのでしょう。
 考えてみれば驚くほどのことではないかも知れません。廃棄処分の原因は異物混入、放射能や農薬違反、成分表示違反、賞味期限切れなどいろいろですが、ほとんどは消費者が見てもわかりません。異物が直接口に入ると気づかれますが、大抵は何倍も廃棄するので、危なそうな製品だけを除けば、当たる確率は高くありません。別の袋に入れ換えれば違反や期限もきれいに消えてしまいます。農薬や賞味期限は日本は異常に厳しいので、危険性がない廃棄不要の食品が多いことも事実です。
 廃棄の是非論はともかく、廃棄を請け負った業者の横流しはモラルの上で問題です。回収された欠陥商品が出回る、役所の書類を焼却依頼された業者が新聞社に売る、職員が廃棄書類をライバル会社に売る、などが横行する社会が健全ではないのと同様です。
 カドミウム汚染米が格安米に、飼料用穀物が食用に化け、腐った肉が味付けで再生されたといった事件が過去にありました。一部の情報では福島産の放射能きのこが産地を変えて流通したとも指摘されています。
 108商品の詳細がわかるのが怖い気がします。

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