医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2013年6月4日

(14)グローバル企業の念願は

  世の中の動きはとても不可解です。たとえば、政府の規制改革会議が提唱している「限定正社員」制度です。正社員と、アルバイトやパートといった非正規社員の中間的な存在で、福利厚生は正社員並みですが、労働内容や地域が限られています。残業や転勤などが強制されない一方、勤務地や仕事がなくなれば簡単にお払い箱になります。
 若い人の結婚、出産が減り、高齢社会にますます拍車がかかっています。よくいわれるように雇用の不安定、収入減が大きな原因です。終身雇用の日本型から簡単にクビにできる欧米型に変わったからです。派遣会社を間に入れるというアイデアが基本になっていると思います。
 派遣業といえば、貧困地域で日雇いの作業員を集め、港湾や土木現場に送り、給料のピンハネをするシステムでした。それが、企業側の要望で多くの職業に広がったから雇用は不安定になり、労働者の収入が減ったわけです。たしか規制改革会議では、働き方が多様にになり労働者のためになる、といった説明でした。
 限定正社員制度は明らかに大企業の意向です。店や工場が1カ所の中小企業だと廃業に相当しますが、いくつもの分野で各地にオフィスや工場を持つ大企業は、より収益を確保するために工場を移し、古くからのもうからない分野は早く撤退し、もうかる新分野に投資、進出したいからです。時期を逃さず対応するには正社員制度が邪魔です。
 小さな店や企業が何かで当てて、大企業になります。一代で何百億円の資産を得ながら経営者はもっともっと巨大化したいのでしょう。そのために人件費を筆頭とする諸経費を安くし、売り上げを増やします。だから工場は日本から中国へ、タイへ、ミャンマーへと移動します。そうしていつか「グローバル企業」に発展します。
 企業の役割は「雇用して人々に仕事を与えること」「税金を払って国を支えること」といったのどかな時代がありました。いま、多くの企業は、自国民の仕事を奪い、あの手この手で税金も払わず、ただ高収益のグローバル企業になりたい、と念じているだけのように見えます。

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