医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2016年1月12日

(137)化血研問題、一応の決着だが

 厚生労働省は1月8日、血液製剤・ワクチンメーカーの化学及血清療法研究所(化血研=本社・熊本市)に業務停止命令を出しました。昨年から新聞やテレビを何度も賑わせた不正事件がこれで一応の決着をみたわけです。製造販売できない期間は18日から5月6日まで。110日はこれまで最長の処分とのことです。
 厳しい処分も仕方がないと思いながら記事を読んでみると、何か違和感があります。実は処分の対象は化血研が販売している35製品のうち、他社の製品があるため困らない8製品だけとあったからです。残りの大部分、つまり8血液製剤、11ワクチン、その他8剤の計27製品は「シェアが大きいか代替品がない」ため、処分の対象外になりました。35分の8は23%。シェアが大きいか代替品がないといえば、販売量も大きいはずです。それだと営業的にはせいぜい1割か、もっと低いくらいの打撃でしょう。実は非常に甘い処分だということになります。いやあ、驚きましたね。
 なるほど、製造工程の二重簿を作ったり、古く見せるために紫外線を当てたりした悪質さも、自分たちは頼まれて薬を作っている、困るのはむしろ国、どうせ向こうが頭を下げてくる、といった感覚だったと考えれば分からないこともありません。一種の癒着構造です。厚生労働大臣は抜本的な体制見直しと語っていますが、5月になれば幹部の顔ぶれが変わるだけ。別メーカーに製造を依頼する、輸入品に代えるなど、もっと厳しく考えないと、永遠に根本的な解決にならない気がします。
 化血研の違反は製造を簡単にするためにヘパリンなどを加えたこととされていますが、それにしても国内の他メーカーや外国メーカーはどうしているのでしょうか。化血研と違ってちゃんと申請してヘパリンを加えた製法で認可されているのか、使わずに作れる技術を持つのか、それとも同様のごまかしがあるものの、内部告発がないから厚生労働省が黙認しているだけなのでしょうか。製造関係の方にこっそり教えてもらいたいものです。

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