医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2015年12月14日

(134)すごいなあ、ロボットスーツ

 最近、一番感動したのは、「ロボットスーツHAL(ハル)」の話です。12月2日、全国公私病院連盟が主催する「国民の健康会議」で、開発者として有名な筑波大学大学院教授でサイバニクス研究センター長の山海(さんかい)嘉之さんが「革新的ロボット技術が拓く医療・介護の未来」と題して講演しました。前月、厚生労働省の専門家会議が医療機器としての承認を了承したとのニュースが流れていましたが、11月25日に認可されたとのことでした。この朗報をふまえ、山海さんは、HALにより、歩けない患者さんの多くが歩けるようになるとの確信を述べました。
 HALは関節部のモーターで足などに装着した装置を動かし、立ち上がったり、歩いたり、座ったりを助けます。最大の特徴は、ももやひざに貼ったセンサーで、全く歩けない患者さんが足を動かそうとする際に生じる微細な電気信号を直接読み取り、装置と連動します。全く動かなかった足がほんのわずかでも動くようになると、やがて神経と神経、神経と筋肉の機能が改善し、少しずつ歩けるようになる、というから驚きです。「HALは補助具ではなく治療器です」と、山海さん。
 何人かの患者さんの動きを映したビデオが紹介されました。50年も動かなかった足が動いたポリオの患者さん、HALで訓練をし、何とジョギングもできるようになった脳卒中の患者さん、筋肉が固まって全く動かない難病患者さんには、ボツリヌス毒素で筋肉を軟らかくし、HALを併用して動かした、など。手足に障害のある小児難病の子どもの成長も促進します。再生医療との組み合わせで脊髄損傷治療も有望です。上肢用や、治療器以外でも重いものを持ち上げる機能を活用した介護や建設現場での腰痛対策用はじめ、さまざまなタイプのHALが作られています。
 HALは実は日本より一足早く欧州で、13年夏に承認を受けており、目下、世界をリードしている治療ロボットです。メーカー・サイバーダイン社の代表取締役も兼ねる山海さんは「数年で医療、介護の世界はガラリと変わります」と自信満々でした。

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