田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(133)介護・医療施設のお金の流れ
介護・医療施設からファミリー企業への不透明なお金の流れがしばしば問題になっています。雑誌や新聞でいま話題なのは、東京都江東区で病院や特別養護老人ホームなどを運営している社会福祉法人「あそか会」。『朝日新聞』が調査委員会の報告書を11月中旬に報じました。
問題なのは約30年独裁的に君臨してきた元常務理事。報告書によると不正処理は約20億円で、うち8億円は元常務理事のファミリー企業に流れています。老人ホーム6人の入居費1億7000万円、病院からの薬代金1億6000万円、元職員寮の未返還保証金4億6000万円がそれきり、というから驚きです。
内幕をくわしく報じた雑誌『集中』によると、元常務理事はファミリー企業経由で薬品などを購入、本人の使い込みは職員に隠蔽させ、従わない職員は解雇したそうです。使い込みは患者の不払い理由の病院「医業未収金」とされ、そのうえ「経営が苦しいから」と職員給与はカット。一方、ファミリーはぜいたく三昧の生活でした。
調査委員会を設けた発覚時の理事長は突然、階段から転落して急死しました。ファミリー企業の社長だった後任理事長は報告書を握りつぶそうとして、失敗しました。そこで「あそか会」は急きょ、別の社会福祉法人に不問を条件に身売りし、うやむやにしようとしている、ということです。
介護や医療には国民の保険金、税金がつぎ込まれています。徳洲会グループを始め何件も表ざたになっていますが、横領、ピンハネしようと狙う経営者や親族が後を絶たないのは本当に悲しいことです。不況下で地域の一般有力企業や土木企業が一時期、もうけ目的から介護ビジネスに参入しました。これを母体の法人も増えています。
これだけひどい例が容認されるようではとても納得できません。社会福祉法人の経営透明化が早急に必要です。