医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2015年11月24日

(131)化血研のごまかしにもがっかり

 企業のごまかし、インチキには際限がない、と感じます。収益オンリー、もうけ主義企業はともかく、本来さほどもうかるはずがない分野ながら社会的貢献を果たすためにできたと思われる企業さえ、違法なごまかしをするのですから、世も末です。
 がっかりさせられたのは血液製剤やワクチンのメーカーの化学及血清療法研究所(化血研=本社・熊本市)です。
 薬剤は法律にもとづき、国の承認書通りに製造することや、詳細な記録が義務づけられています。化血研は12種類26品目の血液製剤を製造していますが、11月5日付け朝刊でいち早く報じた『東京新聞』によると、90年ごろから承認されていない抗凝固剤ヘパリンを加えたり、添加物の量を勝手に変えたりしていたとのことです。そのうえ、少なくとも10年以上前から、実際の製造記録と、承認書通りに作ったとの偽造記録を用意し、国の調査時は偽造記録を提出していました。また、国内シェアの3割を占めるインフルエンザワクチンについても承認書通りでない製造法だったことが判明しています。
 内部告発からか、厚生労働省は6月に血液製剤の出荷を止め、その後、インフルエンザワクチンの出荷自粛を求めました。このため、ワクチン不足が問題化しているようです。
 関係者の弁「長年にわたる法令軽視の姿勢があった」とは驚きです。薬の成分は相互作用の可能性もあるので、製造法の確立までも多くの実験が必要だったはずです。なぜこうしたことが起きたのか、くわしい調査が必要です。
 内外の大企業が患者よりも会社のため行った過剰な宣伝が批判を浴びましたが、製造法のごまかしは場合によってはそれ以上の罪です。1980年代に、はしかなどを予防する「新三種混合ワクチン」で無菌性髄膜炎が多発した事件がありました。同じワクチンメーカー大阪大学微生物病研究所のおたふくかぜワクチンが原因。それも承認とは違う製造法でした。ワクチン政策の後れから、もうからない時代にワクチンを無理やり作らせていたメーカーに厚生労働省の引け目からの甘やかし、があった気がします。
 薬ではありませんが、同じようにがっかりは太平物産 (本社=秋田市) の有機肥料でした。この肥料で育てたニセ有機農産物が10年も流通していたというのですから。

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