田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(130)平山先生が亡くなって20年
月日の経つのは本当に早いもの。ありきたりの感想ですが、このところ、続けて何度もそう感じました。その1つが、11月14日に東京であった「タバコ問題情報センター設立30年と平山雄博士没後20年の集い」です。
センターの代表理事、渡辺文学さんは機会あれば逃さず、たばこ撲滅活動を展開しています。たいしたものです。そのセンターを作るようにけしかけたのが、実は国立がんセンター研究所の疫学部長だった平山さんでした。
朝日新聞の目の前にあった国立がんセンターには私もよく出入りさせていただき、何度か記事を書きました。集いでは、発酵学の小泉武夫さんが、「みそ汁は胃がんに効くとの平山さんの研究が、最近、別のデータでも裏付けられた」と話されていましたが、私が書いた平山さんの記事で一番大きく載ったのがこれでした。81年9月、もう34年も前の1面トップです。脳卒中の原因は塩分、と攻められ、みそ汁も肩身の狭い思いの時期に、突然出てきた疫学調査にだれもが驚きました。
みそ業界は大喜びで、東北の業者が朝日新聞社にみそを1樽の送ってきたそうです。あのみそは送り返したのか、どうなったのかと急に気になりました。「ホントかな」「あんなに大きく書くなんて」と、社内でもちょっと冷たい雰囲気がありました。
平山さんといえば受動喫煙の指摘で世界的に有名です。調べてみると、私が書いた記事は80年10月で「肺がん振りまく愛煙家」の見出し、社会面4段でした。みそ汁より早かったとは意外です。84年、緑黄色野菜のがん予防効果は科学面ベタ記事でした。
今から思えば、たばこの害を強調し、日本政府の非常識なたばこ政策を攻撃し続けた平山さんは、まさに「煙たい存在」だったのだろうな、と思います。最後まで元気で徹底抗戦気分満々でしたが、95年10月に急逝されました。享年73歳はびっくりです。今の私よりも長生きされたわけですから。うーん、負けてはいられない、もっとしっかりしなければ、と思った次第です。
月日を感じたのは、何人もの方が「平山先生にはお会いしたことはなかったが」と話したこともあります。この20年間に、たばこ問題に関心を持つ若い活動家が増えたのはとてもうれしいことです。