医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2013年5月27日

(13)信じられない医療ミス

  最近はとても信じられない医療ミスが報じられています。難しい手術で見えない神経を切ってしまった、離れていた場所の弱くなっていた血管が知らないうちに出血していた、など不運としかいえないような医療事故は、ある程度の率で起こります。それを患者側が容認しなければ医療は成り立たないことも事実です。しかし、なかにはちょっとひどすぎる、と思うものもあります。
 たとえば、北海道函館市の産婦人科医院で、胎児の染色体異常を調べる羊水検査でダウン症の判定結果を院長が「陰性です。心配要りません」と説明し、ダウン症の赤ちゃんが生まれたというケースです。2011年の話ですが、最近、両親が慰謝料請求の裁判を起こしたことから表ざたになりました。
 院長は「検査結果はじっくり見れば分かる内容だったが、見落としてしまった」と釈明したそうです。検査会社からの報告書を見誤ったというのです。
 常識では信じられないケースです。検査会社の報告書がぐだぐだ長く、結論は最後に見えないような文字や外国語の記号で書かれていた、とでもいうのでしょうか。検査会社からの報告は通常は結論が明確です。しかも検査目的がしぼられているのですから、逆に解釈する余地などないはずです。
 院長は検査会社の報告書などをまったく見ずに説明していた可能性があります。検査不要のたくさんの患者さんに検査を勧め、全員にシロだと告げていた気がします。
 生体腎移植の提供者の死亡もひどいと思います。沖縄県浦添市の病院で出血多量のため母親が亡くなった事故に驚いていたら、5 月18日には埼玉医大国際医療センターでも 1月に父親が肺炎で術後34日目に死亡していた事件が公表されました。
 日本は脳死での臓器提供が少ないために、腎臓も肝臓も生体移植がメインです。国際的にはこうした日本流が批判されていますが、その切り札は提供者の絶対安全でした。以前に京都大学での生体肝移植でも提供者が死亡しています。病院の広げすぎか、若い医師の練習台か、ベテラン医師の慣れや慢心か。安易な生体移植への警鐘です。

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