田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(12)予算のむだは当然かも
東日本大震災の復興との名目で、国の予算が無関係の事業に使われている、という話が新聞を賑わせています。もともとは2012年10月、沖縄県の国道整備や反捕鯨団体「シー・シェパード」の対策費、中央官庁の耐震改修費などに使われていることが報道されたことからです。批判を受けて昨年、政府は復興予算は被災地以外で使わないことを決めたはずでした。
ところが、5月9日付け『朝日新聞』によると、どうしてどうして、まだ1兆2000億円もの復興予算がそのままで被災地以外でも使える仕組みになっているとのことです。しかも、多くは省庁や自治体が継続事業に使う基金に復興予算から配分した形です。
たとえば、農林水産省の「森林整備加速化・林業再生基金」には「被災地の住宅再建に材木が必要になる」との名目で、約1400億円が配分されました。実際には全国の林道整備に使われているようです。
こうした経費が不要とはいえませんが、当初予算では他の項目が優先され、もれたのでしょう。大震災が起き、復興という上限のない、批判しにくい予算項目ができると、各省庁は懸案事業をその中に押し込もうと考えます。数年度にわたっての事業が目的で、毎年の決算がなく、使途が表に出にくい基金を迂回させるというのは、いかにも意図が見え見えではないでしょうか。財務省だって気づかなかったはずはありません。
お役所は自分たちが勝手に使えるお金が増えるほど権力が強くなります。そのために仕事を増やし、新たな組織を増やし、天下り先を増やします。昔からむだに使われる税金はあとを絶ちませんが、かなりのものは最初からそれを承知で考え出されています。純粋に被災地に使われる本体の復興予算も、どれだけ水増しできるかが、省庁の腕のようなものでしょう。まったくのむだや失敗に終わった事業でも、だれも責任は取らなくていいのですから、改善は難しいかも知れませんね。