医療ジャーナリスト 田辺功

メニューボタン

田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2015年7月13日

(112)深刻化する一方の認知症介護

 日を追うにつれ、「介護」は社会の重荷になりつつある、といった感じです。どの新聞も開いても、介護関連の、しかも不安なニュースがあふれています。
 昨年は少子化と人口減少から全国 900市区町村を「消滅可能都市」と名指した有識者の研究機関「日本創成会議」が 6月には、東京圈の介護がパンクするとして、高齢者の地方移住を提言しました。
 介護施設が十分であればともかく、施設は常に職員不足です。労働がきついうえに、給料の低いため、なかなか人手が確保できません。そのうえ都会は地価が高いため、施設を増やすなんてとても無理。それなら、田舎の施設に高齢者を移してしまえ、の発想です。家族が行くのは訃報が届いた時でしょう。
 介護保険料を払えず、サービス利用時の自己負担 1割が、ペナルティーとして 3割になる人が増え、全国で 1万人にもなっていることも話題になっています。保険料も払えない高齢者が、それより高いサービス料の 2割を払えるとは思えません。
 介護のために仕事をやめなければいけない人が年間10万人もあるそうです。私の知人、友人には、仕事をやめて故郷の父母を看る、という現役はさすがに少ないですが、「親の面倒を看るので、こうした会にはしばらくは出れない」「付き合いが悪くなるけど」といった断りが時々、あります。
 施設で看きれない高齢者の多くは、アルツハイマー病などの認知症です。政府は認知症の人が2012年の 462万人から25年には 700万人に増えると予測、その対策 (新オレンジプラン) のほとんどは、世話をする体制の整備にとどまっています。だれが負担するかは別としても、費用や人手がかかる一方です。
 本当の対策は、認知症の予防・治療ですが、政府は最初からそんなことは不可能とあきらめている感じです。医療のイノベーション(技術革新)が看板の安倍内閣が思い切って研究費を投資し、認知症を解決すれば世界の賞賛を浴びるのに、と残念です。

トップへ戻る