田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(108)国保は市町村から都道府県運営に
医療保険制度改革関連法が先月、国会で成立しました。病院の食事の自己負担額が増えたり、紹介状なしの大病院受診料が増えるなど患者にとって痛い部分もありますが、それ以上の注目は、2018年度から国民健康保険を市町村運営から都道府県に移管する案件でしょう。
保険制度の財政は加入者数が多いほど安定するはずです。ところが、日本の国民健康保険は特別区や市町村単位。横浜市、川崎市といった大きな市ならともかく、人口1000人、2000人の市町村で、高額な抗がん剤や人工透析が必要な患者が何人も出ると、たちまち大赤字になってしまいます。健康保険制度は全国民加入の一つでいいのに、市町村国保だけでも1700以上というから驚きです。もっとも、国保が統一されれば理事長も事務局長も 1人だけですが、細分化すれば1700人ずつの職ができます。反対が多いのもわかりますが、私は過渡的であっても都道府県単位の方がよいと思います。
厚生労働省によると、国保加入者の 4割が無職の高齢者、 3割が派遣などの非正規社員、3割が農家や自営業です。低収入層が 7割ですから、普通の収入がある人は、健保組合の時より保険料が高くなります。年 8万円強の平均保険料は明らかに高すぎます。
しかも、保険料の市町村格差は 5倍もあります。そもそも医療費の給付が同じなのに、その権利を保証する保険料が何倍も違うというのは信じられない不公平です。同じタクシーに乗る、同じ食事なのに居住の住所で安い人は1000円、高い人は5000円払わされるのと同じです。私は市町村格差も新聞で書きましたが、反応はあまりありませんでした。高額市町村の住民がよく我慢していると感心します。
都道府県単位になれば、いずれは保険料を統一する必要があります。高い市町村を平均額まで下げるのは簡単ですが、安いところを上げるのは抵抗があります。加入者の収入からすれば、国保の保険料をできるだけ下げるべきで、国が相当な税金を補填する以外に国保制度が存続できるとは考えられません。
医師が医療費に無関心で、平気で無駄遣いをしている現在の状況市況を是正しなければ制度はもちません。厚生労働省にどれだけの覚悟があるだろうかと、私は今から楽しみにしています。