田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(5)新出生前診断のこと
今日4月1日から昭和大学病院などで始まるという新しい出生前診断が新聞でも大きく騒がれています。妊婦の血液を調べるだけで、ダウン症などの染色体異常がほぼ完全に診断できるという検査です。安易な妊娠中絶につながらないよう、日本産科婦人科学会では厳しい規制ともいうべきガイドラインを3月に出しました。超音波検査などで染色体異常の可能性があったり、過去に染色体異常の妊娠経験があったり、高齢妊娠などを対象に、しかも遺伝相談ができる学会認定施設で、臨床研究として行う、などの内容です。
以前の超音波検査や羊水検査などは確実でなかったり、手間がかかりました。しかし、米国の会社が確実な血液検査法を開発、2011年から受託しています。
技術の進歩はすばらしいことだと思うのですが、学会や識者からは反対の意見が多く出て、なぜか多くのマスコミはそれを支持しています。異常があると分かると、安易な妊娠中絶につながり、障害者や命の否定になる、というのです。
しかし、自分の身に置き換えても本当にそうでしょうか。異常を知っても産み、育てることは人間としてすばらしいことですが、万人にできることではありません。ダウン症は知能の遅れや心臓などの臓器異常が高率に伴い、顔つきや行動にも特徴があります。何倍もの苦労は明らかですし、その子の将来も不安です。
そもそも、日本では経済的な理由で中絶が認められています。これを容認しながら、異常のある子どもの中絶だけを問題視するのは本質的に無理があります。中絶をした人は人間の存在を否定している、というのも乱暴です。
高齢妊娠はダウン症の確率を増やします。といっても40歳の母親で100 分の1ほどで大部分は正常です。神様に任せて検査しないのもよし、検査で異常が分かって夫婦で考え抜くのもよし。学会を含めて他人がどうこういうべき問題でしょうか。そもそも生まれてくる子ども100 人に 2人は何らかの異常があり、ダウン症はその10分の 1程度だろうと聞いたような覚えがあります。
規制を厳しくし、代理母のようにわざわざ海外へ行かなければならない、という事態がいいとは私には思えません。