医療ジャーナリスト 田辺功

メニューボタン

田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2013年4月15日

(7)原因不明の腰痛の治療

 びっくりするような記事が時々あります。3月下旬、古巣の朝日新聞の1面トップに載った「腰痛2800万人」もその1つでした。本筋は「40代から60代の約 4割が腰痛で悩んでいる」との厚生労働省研究班の調査と、日本腰痛学会などの診療ガイドラインを組み合わせたものです。ガイドラインでは、腰痛の8割は原因不明で簡単に治らず、鎮痛剤などの薬物治療の対象です。
 医療は分かっていないこと、非科学的なことがとても多い分野です。だから10年もたつと常識も治療法もひっくりかえってしまいます。一方で、だれでも関心がある医療は、大ニュースがないような時、「想定外」に大きく扱われます。この腰痛記事もそうではなかったでしょうか。現役時代私は本当にニュースと判断した時しか、大きな扱いにならないようデスクに頼んだものです。
 腰痛は「国民の8割が一生のうちにかかる」というのが常識です。しかも、その8割以上が原因不明であることは、何年も前から何度も、NHKの番組や新聞で報道されています。そのうえ、私の理解では、ちゃんと治す方法があるのに、多くの医師はそれを知らないか認めない、という変な状況になっています。
 国立病院のリハビリ科医師だった博田(はかた)節夫さんは原因不明の腰痛の多くは骨盤部の仙腸関節から起きていると確信し、それを手技で正す「AKA博田法」を開発しました。学会でも発表し、専門書も出ています。しかし、整形外科医のほとんどは信じていないようです。
 私も最初は半信半疑だったのですが、何人かの知り合いにその治療を受けてもらいました。確かによくなったので、数年前から雑誌でこの治療法を勧めています。
 整形外科で治らないので、仕方なく患者さんはカイロや整体術、鍼灸などに流れます。先の大きな記事を見て、患者さんの苦難の時代はまだ続くのだ、とついつい同情してしました。

トップへ戻る