医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2023年11月6日

(520)読んで苦しくなる記事ばかり

 郵便受けに新聞の朝刊を取りにいくのが習慣になっています。世の中の動きを知るのが私のような古い世代にとっての楽しみ、でした。ところが今は、大見出しの記事を見て、読むのが苦しくなっています。ガザの空爆で毎日何百人も増える死者の数、救急車や病院の爆発で突然に人生を終えた人、家族の嘆き。自分がそうした被害に会わずにいることに感謝するしかありません。
 10月末にはもう 1つ、大きな記事がありました。10月27日、静岡地裁で始まった死刑囚袴田巌さん (87) の裁判の再審です。意思疎通が困難な袴田さんに代わり、補佐人の姉秀子さん (90) が無実を主張しました。これに対し、検察は味噌タンクから見つかった衣類などの証拠を示し、あくまで袴田さんの犯行として争う姿勢を見せました。
 講読している『朝日新聞』は袴田さんが獄中生活の約30年間に母親や姉らに訴えた多数の手紙を連載記事で紹介しています。静岡県の味噌工場の従業員だった袴田さんは1966年 6月の専務一家 4人殺害事件の犯人として 8月に逮捕されました。警察で 1度は自白したものの裁判では一貫して無実を訴えました。
 1967年 1月の最初の手紙から袴田さんは「私は白です」と書き、何通もの手紙で無実を訴え、いずれ裁判で無罪になると信じていました。味噌タンクの衣類も「絶対に僕の物ではない」と書いています。
 もし、私が真犯人だったとして、こんな残酷なことをしながら「無実だ」との嘘を、繰り返し繰り返し30年も書き続けることはできそうにありません。犯行に使った衣類をいずれ見つかるようなタンクに隠すのも危険過ぎます。このようにしてえん罪が生まれますこともあります。犯人との断定にはもっとはっきりした証拠が必要でしょう。
 弟の無実を信じ、闘っている90歳の秀子さんがとても素敵です。

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