田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(206)天皇の生前退位で考えること
今上天皇の退位問題が決着です。5月19日の閣議で皇室典範特例法案の内容が決まりました。この問題は16年8月、天皇陛下の率直なお言葉が始まりでした。80歳を過ぎ、2度の外科手術を受け、体力の衰えから務めを十分果たせなくなるとの懸念です。今上天皇はすでに5年ほど前から「生前退位」の意向を示されていた、ともいわれます。
皇室典範では天皇は退位の規定がなく、即位後は亡くなるまで天皇のままでした。特例法案では、国民の理解と共感を明記したうえで、生前退位を認めます。また、退位後の呼称は「上皇」「上皇后」となります。
今上天皇のお考えはよく理解できます。新聞やテレビで見ると、天皇の仕事は多忙です。閣僚の認証、外国要人との会見、国会、会議や行事への参加、外国訪問など次々にあります。80代のご高齢にはたしかに大変です。
私は天皇のお仕事を思い切り減らしたらいいと思っていました。今上天皇はお言葉で「国事行為などを限りなく縮小していくことには無理があろう」と話されていますが、ご病気の時は欠席や不参加が当然ですから、減らしてもおかしくありません。日本国民が皇室を敬愛しているならご健康第一のはずです。不参加にがっかりはあっても、憤ったり怒ったりする人がいるでしょうか。
お仕事の多くは宮内庁や諸官庁、政治家が要請し、増やしたものです。天皇がご臨席の国際会議と重要度や意義は関係なく、おそらくは会議の主催者のコネの有無です。あの会にご臨席されたのだからウチの会にも、と際限がなくなります。
秋篠宮家の眞子さまの婚約予定のニュースもありました。皇族女性は結婚で皇籍を離れるので皇族数が減少すると問題視する向きもあります。しかし、皇族が減ることがどうして問題なのでしょうか。
私には悪しき官僚制度のように見えます。宮内庁職員の数や仕事、予算が減り、存在感がなくなることへの抵抗です。どのお役所も仕事と予算を増やし、自分たちの権益を大きくしたい。どうやら宮内庁も例外ではなさそうです。