田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(205)臓器移植の患者選定ミス
日本臓器移植ネットワークで起きた移植患者の選定ミス事件は私にとって、やはり気になるニュースでした。
1月下旬、脳死心臓移植で優先順位1位と2位の患者のいる大阪大学病院に連絡したところ、「順序が逆ではないか」と指摘を受けました。昨年10月に導入したコンピューターシステムのプログラムミスが原因でした。患者の状態を示す情報を修正すると待機日数が二重に計算されました。悪い状態で長く待機している患者が優先ですが、さほど悪くない患者でも修正があると待機が長くなって逆転することがあり、実際、21回の選定で3回が間違っていました。優先順位1位の患者は2回も移植機会を逃しました。今回、同じ病院の患者でなかったら気づくのはさらに遅れていたことでしょう。
本当に深刻な話です。脳死臓器の提供は最近は年間60例ほどに増えましたが、患者は命がけ、一日千秋の思いで待機しています。移植を受けられずになくなる患者は多く、それが選定ミスではあんまりです。
実は以前にもミスがありました。14年11月にはすい臓・腎臓同時移植希望の患者に、腎臓のみの移植でもよいかを聞かずに飛ばしてしまい、15年3月には職員の操作ミスで優先順位の低い患者に腎臓移植をしてしまいました。病院間や提供者などの調整で多忙な移植コーディネーターの誤解、見逃しも言われました。
ネットワークは先月下旬、再発防止策を発表しました。新しく選定専門の部署を設け、専門職を配置するそうです。銀行でも鉄道でも一般企業でも、コンピューターの切り換え時にプログラムミスが多発しています。業務を知らない外部の技師の限界でしょうか。ネットワークではコンピューターの専門家も採用するようです。改善の成果を期待したいものです。
蛇足ですが、多忙のせいもあるのか、個々の医療は軽視しされがちで、医療全体が惰性で流れているような感じがします。医師や病院、関係機関は患者の切実な思いをもっともっと分かってほしいと思います。