田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(203)健保制度、皆保険制度、今後はどうなる?
トランプ大統領の新政策は性急すぎてうまく行かないものが多いようです。その1つが「オバマ・ケア」の廃止・修正でした。
日米の健康保険制度は大きく違います。米国では民間企業が運営する保険が6割、公的保険が4割の比率でしょうか。民間保険は雇用主が契約・提供するか、個人契約です。公的保険は低所得者対象の「メディケイド」と高齢者や障害者対象の「メディケア」。どの保険にも加入できない米国民は2割近く、4千万人以上といわれます。医療費が日本の数倍以上も高いので、個人の破産原因の6割が医療費といわれています。
前任のオバマ大統領は2010年に医療保険改革法(オバマ・ケア)を制定、従業員50人以上の企業に保険提供を義務づけ、保険会社の営利目的行為を規制しました。無保険者は減った一方で、企業負担が増えました。企業の反発をバックに元に戻そうとした大統領に共和党議員は必ずしも賛同しませんでした。
保険制度は欧州各国にもあり、「日本の皆保険制度は世界一」は誇張ですが、実質1割程度の自己負担で必要な医療を受けることができるのはとても良い制度だと思います。しかし、医療費高騰の波を受け、今後どうなるでしょうか。
健保組合の平均保険料は10年連続で上昇中。労使折半で1人年額48万円は決して安いとは言えません。国民健康保険では2割近くが滞納になっています。日本も少しずつ米国に近づいている、とも言えます。
厚生労働省が検討しているメタボ健診の高受診率組合や健康重視企業の組合への優遇措置はいかにも姑息な感じがします。日本独自のメタボ健診で果して医療費が節約できるのかが疑問です。
間違いなく言えるのは、皆保険制度の維持にはもっと本格的な税金投入が必要だということです。そのうえで、思い切ってむだな医療の整理が不可欠でしょう。しかし、むだな医療、効果のはっきりしない医療で制度を維持してきたのが医療界です。厚生労働省もおそらくわかっていながらそれを正すことができなかったのですが。