田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(202)日常的すぎる忖度と談合
昔から、といえばそれまでですが、このところ、またまた「談合」という新聞の見出しが目を引きます。今月初めには東日本大震災の復興事業で公正取引委員会が農林水産省東北農政局やゼネコン会社などを立ち入り検査しました。著名な大手建設会社も含まれています。
4月18日には伊藤忠商事など5社でした。これはNTT東日本が発注する職員作業服の入札にからんだ談合とのことです。また、4月20日は東洋製缶など缶詰の缶製造の大手3社の番でした。
限られた関係者が額を集め、入札の価格などを打ち合わせ、落札を順繰りに回し、他の会社に仕事が流れないようなシステムを作って運営するのが典型的な談合です。一番安い価格で落札する競争入札より高値にできる分が利益になります。
たいていは発注する企業側にも通じる仲間がいます。税金を配分する震災復興事業では農水省からゼネコンに天下りしたOBです。話題になった天下りあっせんも、発覚した文部科学省に限らず多くの省庁にあるはずです。
たしかに人間社会でいい仕事をするには人と人とのつながりが最も重要です。ひんぱんに顔を合わせ、飲みに行けば仲良くなれます。人柄もわかり、誤解の懸念はなくなり、どんな話も通じやすくなります。
森友学園事件で流行語のようになった「忖度」(そんたく)は、さらに進んで、権限ある者から仲良しへの権限分与的な配慮です。それに個人的な利益を加味してより確実にする手段が接待、賄賂でしょう。開発途上国での商売には巨額の裏金が動きますが、文明国でも原則はさほど変わらないと思います。
それに比べると、個人的に金銭が動かない業者間の約束(カルテルや談合)は集団的な忖度のようなもの。違法行為でも罪悪感の少ない部類です。忖度社会の日本では根絶は難しいだろうな、とつい甘く思ってしまいます。