医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2017年4月10日

(200)診断、健診の意義はわかるけれど

 
 道路交通法が改正され、 3月から高齢運転者の認知症対策が強化されました。75歳以上の人は運転免許更新時に簡単な認知症テストを受けます。これまではそれで「認知症のおそれあり」とされると改めて医師の診断を受ける、という仕組みになっていました。16年は約5万1000人がチェックされ、約1900人が診断を受けたそうです。テストで可能性が指摘された人は医師の診断を義務づける、というのが今回の改正です。
 私が読んだ記事 ( 3月10日付け『朝日新聞』) は珍しく、実施には多数の医師が必要なことに触れていました。要診断者は前述の約1900人から約 5万人に増える見込みで、警察は各地医師会などを通じて約3100人の医師の了承を得た、ということです。公安委員会の指定医は公費負担ですが、自己負担のあるかかりつけ医の診断書でも有効です。
 おそらくは高齢者が集中して指定医が悲鳴を上げるのではないか。できるだけ短時間で済まそうとすれば、認知症をどの程度判定できるのかも疑問です。認知症の症状はムラがあり、いつでも観察できるわけではありません。一晩中車を走らせていたという高齢者だって、いつもおかしければ家族は運転させなかったのではないでしょうか。
 日本の制度はたいてい形式主義で、実際に有効かは二の次です。指定医やかかりつけ医の診断力を問題にしたら簡単に義務化することはできません。
 4月から名古屋市など一部自治体から産後うつ病などの予防健診が始まる、とのニュースもありました。出産した医療機関で、産婦人科医らが2週間目、および1カ月目の母親を診察し、心身状態をチェックする制度です。費用は国と自治体が負担します。母親にはとてもいいことなのですが、やはり、産婦人科医がうつをどの程度理解しているか、そもそも全国的な産科医不足で大丈夫か、なども頭に浮かびます。
 小児医療の公費負担は都道府県や自治体でまだばらつきがあるようです。公費負担拡大はよいことですが、小児科医不足の地方では、行政は真剣に対応しなければなりません。

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