医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2017年4月4日

(199)厚労省はもっと介護に真剣に

 
 日本の法律や官僚の甘さにはしばしばあきれてしまいます。内輪の勉強会で医療関連の話題になり、元厚生労働省の友人が今の問題点をいろいろ話した時に、ついつい本音で発言してしまいました。「医療問題の解決法は昔からはっきりしている。なのに医師会や財政当局の反対が強いからと、厚労省がきちんと対応しなかったから問題が先送りされてきたんでしょ」
 たとえば同じ厚労省が担当する介護の問題です。そっくりの新聞記事を何度か見た記憶がありますが、3月上旬には特別養護老人ホームで職員不足のため、1割以上の施設に空きベッドが生じていたとの調査が出ていました。需給アンバランスで申し込み者が少ない施設もあるそうです。全国的には特養不足でもったいない状況ですが、政策的にはいくらでも手が打てそうに思います。
 下旬には、介護職員による虐待調査です。15年度の自治体集計では介護施設職員による高齢者虐待が過去最多の408件ありました。原因は「教育、知識、介護技術などの問題」「職員のストレスや感情コントロールの問題」が多かったとのことです。
 おなじ下旬には、無届けの有料老人ホームが1207施設あり、うち815施設は県などの指導を受けても無届けのまま、との記事です。全国の有料老人ホームは8000施設ほどだそうですから無視できません。
 ここから浮かぶのは、遵法精神の乏しい、いい加減な人たちでも老人ホームを経営できるということです。介護職の低賃金が問題になっていますが、他の職がなかったからやってるだけとの職員も少なくないようです。すぐ頭にきて、要介護の高齢者に乱暴する人が介護職にふさわしいかどうか。実は、経営者は安く使えればだれでもいい。上から下までがそんな人たちの施設では、不十分な介護や虐待は当然です。それを許している厚労省も何のために老人介護をするのかを考えていない、としか思えません。

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