医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2016年5月9日

(153)報道の貧しい国、は残念

 日本人が最も休めるゴールデンウィーク。ゆっくり体を休めることができました。健康回復途上では自由に休める身なのですが、自分だけより、国民全体が休めていると考える方が、なぜか安らかな気分になれます。
 そんななかで思い出したのが「報道の自由」です。国境なき記者団というNGOが各国の報道の自由度を評価しています。4月20日に公表された今年のランキングで日本は世界180国・地域のなかで72位でした。トップ3 はフィンランド、オランダ、ノルウェーで、ドイツ12位、カナダ18位、英国38位、米国41位、フランス45位。日本より下はロシア148位、中国176位、北朝鮮179位とのことです。日本の順位は2010年の11位から毎年下がってきています。報道関係者としては残念としかいいようがありません。
 小選挙区制の欠点を生かした自民・公明の多数派絶対主義を背景にした安倍内閣の強権政治に、新聞・テレビは押されっぱなしです。放送免許によるテレビへの脅し、「ニュースは公式発表だけでいい」といった安倍首相のお友だちのNHK会長発言、従軍慰安婦問題をきっかけにした朝日新聞攻撃など、メディア関係者から見ると、とくにこの数年はめちゃくちゃです。秘密保持法などの怪しげな法律ができ、戦争放棄の憲法も放棄しようとの勢いです。
 最近の新聞報道には物足りない思いです。事件や事故の一報も表面的に起きたことの描写だけで、細部や少し深い背景などがまったく分からない記事がほとんどです。警察などの発表なのでどの新聞も似たりよったりです。昔の記者は内密のシンパからこっそりと聞き出して独自ネタをつけ加えたものですが、今は刑事も危険をおかしてくれません。
 行政や企業ニュースも大半は共通の発表ものばかりです。熊本地震など大きな事件があると何日も似たような続報が続きます。アメリカの大統領候補を選ぶ予備選挙が毎日のように報道されていますが、大統領に決まった話ならともかく、日本人にはどうでもいい、どうしようもない無意味なニュースに思えます。
 自社だけの独自ニュースは真偽も不安、政府批判は反撃が怖いからやめる、発表そのままが安全、はいずれも報道の自由度の低い国の特徴です。そうそう、北朝鮮は何十年ぶりの朝鮮労働党大会。招かれた各国の記者は会場にも入れず、指定の施設を見学しているだけといいます。「いやあ、あれが理想ですなあ」と、日本の閣僚や政治家たちが感銘を受けていないとも限りませんね。

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