田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(149)古都・奈良を思い出の旅
私の4月はまず、古都・奈良の歴史散歩から始まりました。先月、家内と一緒に、医師であるM先生宅を訪問しました。昔は結構お付き合いがあったのに、この数年はごぶさた中でした。両方とも子どもが独立し、2人暮らしです。旅行の話になり、M夫妻は「4月に奈良の橿原神宮の神武天皇2600年大祭に参加しますが、なかなかホテルが取れなくて」と、こぼされました。すかさず家内が「あら、じゃあ、ウチに泊まられたら」。
ウチというのは実は、おば宅です。おばは家内の父親の弟の妻で、夫は6年ほど前に亡くなり1人暮らし。夜は自宅ですが、毎日、近くのディケア施設に通っています。認知症が進行中で、管理役の家内は2カ月に1週間ほどは奈良で過ごします。
家内はすでに行っており、私がM先生夫妻と新幹線に乗ったのは1日の金曜日の朝でした。京都から近鉄で、大和西大寺にあるおば宅に着きます。
奈良はあまり知らないというご夫妻にどこを案内しようか。行き先は無数にあるので、ちょっぴり悩みます。お医者さんということから薬師如来を連想しました。
1日の午後は雨の薬師寺。黒光りしている本尊の薬師三尊はやはり感激です。薬師寺は飛鳥から移ってきた寺。その頃からの東塔は修復工事中で布で覆われていました。
2日朝、まずはすぐ近くの秋篠寺へ。技芸天と、周囲の森と苔が素敵です。「吉野の桜を見たい」というご夫妻の要望からレンタカーで「女人高野」の室生寺へ。山間地に隠れた寺の雰囲気にご夫妻は何度も感嘆です。有名なのは十一面観音ですが、金堂には薬師如来もあり、その前に12神将が並びます。石段を登って優雅な五重塔まで。薬師寺、室生寺の桜は満開でしたが、吉野の下千本、中千本の桜は1週間ぐらい先のようでした。
3日、ご夫妻は橿原神宮へ。天皇、皇后両陛下もいらしたようです。
4日は新薬師寺と白毫寺へ。新薬師寺は本尊の薬師如来を12神将が取り巻いています。12神将は元はカラフルな像で、その再現像に感激します。白毫寺の五色椿はそろそろ終わり頃。落ちた花が地面を彩っていました。M夫人が見たかった阿修羅像のある興福寺国宝館が締めになりました。
私は朝日新聞記者になって2つ目の支局が奈良で、実は文化財担当でした。両陛下が初めて今回訪問された高松塚古墳が発見されたのは私が担当の時です。
次々に昔が浮かんでくる旅でした。