医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2016年2月1日

(140)厚生年金の充実を計れ

 厚生年金の未加入者が多いことが最近、話題になっています。年金制度の根幹にも関わる重要課題ですが、これまで厚生労働省はあまり真剣に取り組んできたとはいえませんでした。若い時は年金などには無関心ですが、年取ってから気づいても手遅れです。
 年金は、勤務者向けの厚生年金と自営業者、無職者などの国民年金に大別されます。会社の正社員、パートでも一定時間以上働く人は厚生年金の対象です。受け取る厚生年金の平均額は月14万7500円で、54500円の国民年金より多いのですが、保険料は2.5倍です。しかも半額は雇い主である会社が負担するよう義務づけられています。
 それを払いたくない会社は、社員に厚生年金の手続きをさせません。若い社員はよく知りませんから、いわれる通り国民年金に入ります。厚労省の推計によると、そうした加入逃れ会社が80万もあり、本来は厚生年金に入るべき約200万人が未加入になっている、というわけです。
 厚生年金でも楽とはいえませんが、国民年金だけで生活できないのは明らかです。そうすると、税金で家計を補助する生活保護などが必要になります。税金が加入逃れ会社の不当な収益に回っている、とすればやはり問題でしょう。厚労省の働きかけで昨年度は約4万社が加入した、と報道されました。
 古い記事を調べると、すでに2004年には大問題になっていました。同じ社員のまま解散し別会社にして厚生年金に加入しない、社員を全員パートにし労働時間を短く申告して対象外にした、などの実例も報道されています。相談を受けた旧社会保険庁がニセの「休眠届け」を提出させ、支払い逃れを黙認していたとの記事もあります。表ざたになってからでも12年近くが経っているわけです。
 年金制度は最初は保険料をため込む一方で、もうかる感じがしたのでしょう。お役人は保養所をたくさん作ってムダ遣いし、天下り先を増やす企業基金制度を作って損を出し、厚生年金ばかりか国民年金の未加入問題も放置してきました。だれにも責任はなく、配る年金額を減らせばいいのですから気楽なものです。

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