田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(111)気になるトヨタの女性役員逮捕
最近、気になっているのは、トヨタ自動車の初の女性役員、ジュリー・ハンプさんのことです。先月18日、警視庁が麻薬取締法違反 (輸入) の疑いで逮捕、ハンプさんは役員を辞任しました。
逮捕した組織犯罪対策5課の発表によると、ハンプさんは、米国から麻薬成分のオキシコドンを含む錠剤57錠を国際郵便小包で輸入した疑いです。痛み止め目的の医療用麻薬ですが、個人が日本に持ち込むには医師の診断書や携帯が必要で、郵送での持ち込みは認められていないとのことです。荷物の底にいかにも隠すように入れられていた、とか、父親が送ってくれた、といった断片的な続報が何度かありました。
違和感がつきまとうのは、果して逮捕に足るような罪なのかということです。日本でも使われている成分の薬。大量に輸入して売りさばくわけではなく、腰やひざの痛み止め目的で、自分用の少量です。医療用麻薬は国によって認可や扱いの違いが考えられます。アメリカで処方してもらい、持ち帰るのを忘れたので送ってもらった、といった程度で、どの国も罰しているのか疑問です。
犯罪を疑えば警察や検察に逮捕権があるとはいえ、一般的に、日本の警察は逮捕しすぎです。逮捕は本来は証拠隠滅などの予防目的ですが、日本の警察は、悪質でない不運な交通事故でも、女性が言いたてるだけの痴漢やセクハラ行為でも、少額の万引きでも、酔っぱらってのけんかでも、認知症による万引きでも逮捕します。そのうえ、メディアは著名人や有名企業勤務者、医師や教育者、有名大学生などは実名で報道します。実際には微罪でも、報道で職や名誉を失います。「罪を憎んで人を憎まず」どころか、警察とメディアは協力して見せしめにします。そのくせ、警察は身内や親しい関係者の子弟などは、たとえ該当しても知らぬ顔。明らかに不公平がまかり通っています。
もし、ハンプさんが小企業の従業員なら話題にならなかったと思います。きっかけは、成田空港に着いた国際郵便小包を東京税関が調べてわかったとのことですが、すべての小包を開けてチェックしているなら税関の仕事はとても大変です。