田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(109)まだまだ、日本の精神医療の現実
先週、急に日本テレビ系読売テレビの情報番組「ミヤネ屋」から声がかかりました。翌日の出演で、テーマは精神病院での虐待事件、とのことです。テレビは時間的にギリギリなので、忙しい先生方がなかなか要望に応じきれなくて回ってきたのでしょう。
司会の宮根誠司さんがいるのは大阪のスタジオ、こちらは東京・汐留の日本テレビ内の部屋のカメラの前で、質問に答えるという役割でした。うつ病と診断され、薬を飲んでいるうちに悪化し、千葉県の精神病院に入院した30代の青年が急死しました。遺族が病院に説明を求めるなかで、保護室で虐待されている映像が見つかったという事件です。
本当に心が痛みます。きちんとした病院、先生もいらっしゃるのですが、日本の平均的な精神科医療は世界から異常視されています。診断から疑問。薬に頼りすぎ、どんどん量と種類を増やすので、副作用で本当におかしくなります。そして入院。欧米の数倍の入院率で、しかも世界で突出して入院期間が長い。平均で米国 9日、ドイツ40日に対し、日本は280 日といわれます。国は精神病院の医師や看護師は一般病院より少なくていいとしています。治すというより、隔離・収容政策が見え見えです。社会全体が精神病への偏見を持ち、家族ばかりか国も患者を見放しているかのようです。
日本の精神病院は自由に見学も往来もできず、閉鎖的です。閉鎖社会は力の強い者のやりたい放題の社会です。しかも、日本は基本的にいじめ社会です。精神病院や介護施設で看護者や介護者が患者をいじめ、虐待することは昔から珍しくなく、新聞などで表に出るのはごく一部だけです。
質問に答えて、まあこのようなことを話したつもりですが、予期した質問がなくて、言い足りなかったところもありました。精神医療に限らず、日本の医療全体が、患者のための医療ではなくて、病院や医師のための医療にとどまっているのが残念です。