田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(97)免震ゴム装置のごまかし
またか、という感じがします。東洋ゴムの免震装置のごまかしです。
3月13日、国土交通省は大阪市に本社を置く東洋ゴム工業が製造・販売した免震装置のゴム製品に不良品があったことを公表しました。しかも、その一部は担当者が基準外の製品と知りながら、データを偽装して出荷した疑いが持たれています。地震の揺れを小さくし、建物の損傷を防ぐ目的のゴム製品の変形が大きいと、設置する意味がなくなってしまいます。使われた建物は全国で55もの官庁庁舎やマンション、病院など。地震で機能を失わないよう特別に予算を配分した管理者は、裏切られた感じで大きな衝撃を受けているでしょう。とくに、湘南鎌倉総合病院をはじめとする病院は、改修工事をするとしたら大変なことになりそうな予感です。
思い出すのは、2005年に発覚した「姉歯事件」です。千葉県の一級建築士が構造計算を偽装し、建築基準法の耐震基準に満たない6件の建物を設計していました。震度5の地震で倒れる可能性があるといわれました。関連して、同じような別の建築士や建設会社の偽装が加わり、一時期、大変な騒ぎになりました。
震災や事故対応の製品は必ず使われるとは限らず、「万一」の備えです。東洋ゴムの担当者も「大震災に合う確率はゼロ」と見くびっていたのかも知れません。
AED(自動体外式除細動装置)は、心臓が停止した場合の救命装置ですが、2008年ごろから最大手、日本光電の機種に不良品があることがわかり、何度も自主回収が行われています。設置している公共の建物や駅などでは日常的なテストはしておらず、いざの時に動かない、では意味がありません。実際、助からなかった人が出ています。
自動車事故時の万一装置、エアバッグでは、日本のタカダ製品が世界中で回収されています。日本の企業は質の高さが一番の売り物でしたが、近年の日本人全体のモラル低下の現れか、“万一製品”から手抜きが常態化しているのではないか、と心配になります。