田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(91)人質事件で気になったこと
日本人2人の人質事件の反響が新聞でもテレビでも国会でもまだまだ続いています。
事件のその後は、危惧していた通りになりました。過激派組織「イスラム国」は後藤健二さんと、ヨルダン政府に捕まっている女性テロリストとの交換を提案、一方、ヨルダン政府は自国のパイロットとの交換を求め、生存の証拠を要求しました。
これに対し、イスラム国は答えません。私はパイロットはすでに処刑ずみだったのではないかと思っていました。間もなく、後藤さんの処刑、そして1カ月前にパイロットは処刑ずみとわかりました。怒ったヨルダンの報復の空爆、と進みました。
日本人2人が殺されたことで、国会でも議論になりました。安倍首相の軽率な言動がイスラム国を刺激したのは明らかですが、首相は、政府として十分に考えた対応と言い張りました。また、将来は救出に自衛隊を派遣するかのような危ない素振りも見せました。首相の「積極的平和主義」は、軍国主義と紙一重のように思えます。
空爆にも心が痛みます。空爆では兵士だけでなく、一般の人々も犠牲になるからです。イスラム国が虐待中の人はともかく、仕方なく言いなりになっている人が空爆で家族を殺された時、恨むのはイスラム国でしょうか、それとも米国やヨルダンでしょうか。
日本人は中東の人々となぜか根本が違うような気がします。その日本人を見ている米国人は、空爆が逆に過激派の兵士を増やしている可能性があるとは露ほども思っていないのではないでしょうか。
新聞には70年前の東京大空襲の記事もありましたが、米国は勝利が確実になってから、日本の多くの都市を空爆しました。また、広島、長崎にはさらに強力な原爆で空爆しました。兵士ではない多くの一般人が亡くなりましたが、だれがどう考えても、不必要な死です。しかし、米国を恨んでいる日本人はまれで、戦後の日本人は米国崇拝。政治家などはいかに米国に取り入るかの競争をしてきました。
米国政府はおそらく、シリアやイラクの人々はフセイン政権転覆や空爆で、米国に深く感謝していると信じていると思います。