田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(81)あまりにもひどい政治家の会計
あまりにもずさんな報告に驚きです。東京地検特捜部は10月30日、小渕優子・前経済産業大臣の不明朗な政治資金処理に絡んで捜査に乗り出しました。小渕大臣と松島みどり・法務大臣が10月20日にダブル辞任して幕引きかと思われましたが、国民の疑惑は大きく、しかも解明されそうな状況にまったくないことから決断したのでしょう。
政治資金の透明な運用をめざして政治資金規正法は、各議員の政治団体の収支報告を定めています。小渕議員のケースで最大の疑惑は、毎年1、2回、実施している東京での観劇会の収支です。「参加者が1万円余りの実費を払っているはず」(小渕議員)なのに、2008年、09年は支出だけで収入の記載がなく、12年は収支ともありませんでした。朝日新聞報道によると、05年から11年までの報告では、収入約1200万円に対し、支出は約6500万円で差額は約5300万円にものぼっています。小渕議員は古くからの秘書任せで、自分でもわからないとの趣旨の説明でした。
一方、小渕元首相から2代にわたって秘書だったという群馬県中之条町の町長が「私が責任者で、議員は知らない」と発言、町長を辞任しました。東京地検は政治団体の事務所やこの前町長宅を家宅捜索しました。収支報告が合わないのをどう説明するかです。盗んだのか、それとも知られたくない秘密の支出を隠したのでしょうか。
各団体には会計責任者がいますが、小渕議員の場合、いずれも名義貸しでした。本人も見ていない。今回の発端は『週刊新潮』の取材でしたが、新聞記者もほとんど見ていなかったわけです。これが何年も続いていたわけですから、政治資金規正法は評判通り、まったくのザル法でした。
いったん話題になると、メディアは似たケースを探します。自民党の何人かに続いて野党の幹部まで、不適切な報告が続出しています。どの党であれ、政治家というのは本当に非常識な人たちだということがわかります。