医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2014年10月27日

(80)恐怖募らすエボラ出血熱

  エボラ出血熱の患者が1万人、死者は4900人を超えたそうです。これまでにアフリカで何回かの流行がありましたが、いずれも死者は300人弱で収束していましたから、今回はたしかに史上最大の規模です。
 そのうえ、米国でも患者が発生しました。リベリア人男性が9月、エボラ出血熱を発病し、テキサス州の病院で治療を受けました。男性は亡くなったのですが、10月、2人の看護師が院内感染で発病したことがわかりました。さらに「国境なき医師団」の一員としてギニアで治療にあたっていた医師が帰国後、ニューヨークで発病、と続きました。2人の看護師の完治というグッドニュースも含めてエボラ出血熱は米国人に一挙に身近かになりました。米国のニュースはアフリカやアジアの何倍もくわしく日本に伝わります。米国での恐怖感がテレビや新聞で報道されるつど、以前の鳥インフルエンザ騒動を思い出させました。
 エボラ出血熱は怖さでいえば最大級の感染症です。原因ウイルスをやっつける確実な薬がなく、死亡率は6割にも達します。風邪症状から肝臓、腎臓障害、さらには目や鼻から出血します。血液や体液に触れると、高率でウイルスが感染します。
 感染防御が流行阻止の決め手ですが、ギニア、シェラレオネ、リベリアなど西アフリカの流行国では清潔を保つための水や用具、隔離ベッドなどが不十分で、医療関係者や家族の感染が止まりません。病気を実感していない家族が患者に触れる、という習慣的な問題もあります。医療体制の整った欧米諸国が過度に恐れる必要はありません。
 ところで感染症はエボラ出血熱だけではありません。世界の三大感染症統計では、2013年に、エイズと結核でそれぞれ160万人、マラリアで60万人、合計380万人が亡くなっています。その何割も占めるアフリカ諸国では感染症による家族の死は日常的です。
 前記3国のエイズ感染率はアフリカでは低めですが、それでも国民100人に1~2人がかかっています。エイズの死者のほうがエボラ出血熱の何倍、何十倍と多いのです。
 アフリカに止まっていたエボラ出血熱が欧米をうかがっている、これは大変だ、というのがニュースの本質なのでしょう。


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