医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2014年10月20日

(79)賛成できないカジノ解禁

  観光や雇用創出効果があるとの触れ込みの「統合型リゾート推進法案」が今国会の焦点になっているそうです。統合型リゾートとは何のことか、と思えば賭博場で、法案もわかりやすくいえばカジノ解禁法案。日本にもマカオ、ラスベガス、シンガポールのような大型カジノを作り、海外の富裕客から巨額の賭博金をふんだくろう、とのたくらみです。
 安倍内閣は口を開けば「成長戦略」。すでに斜陽になっている国が成長するにはよほど新しいアイデアが必要ですが、賭博場は古い古い発想。与野党や一般からもさまざまな反対の声が出ています。
 8月には、日本人536万人が「ギャンブル依存症」の疑いがあるとの厚生労働省研究班の調査が発表されました。成人4000人余りに質問したところ、病的なギャンブル依存症の疑いのある人は4.8% (男性 8.7%、女性1.8%) で、人口で推計すると536万人にものぼるというのです。カジノがなくても、パチンコやスロットマシーンが至る所にある日本は、スイス0.5%、米国ルイジアナ州1.58%、香港1.8%を大きく上回っています。
 カジノの経済効果も疑問です。大前研一さんの「日本でカジノが成功しないこれだけの理由」(『サピオ』11月号)によると、通常のカジノはさほどもうかるものではなく、マカオやシンガポールのカジノの収益の85%はVIPルームからとのこと。中国の役人に企業が賭博の勝ち金を装ってリベートを払う資金洗浄システムの役割です。中国VIPは取り締まりを避けてマカオ、シンガポールと舞台を移すので、カジノは順番に衰退していきます。不正目的に利用されるカジノには暴力団も集まります。
 ギャンブル依存症は多重債務、家庭崩壊、自殺、犯罪につながります。生活保護を受けながらパチンコに入り浸りという話には哀れを覚えます。カジノにくらべると罪の軽そうなパチンコもそもそも問題があります。
 『なぜ韓国は、パチンコを全廃できたのか』という本(祥伝社新書、若宮健さん著)を読んで驚きました。日本同様に韓国でも、家庭崩壊や自殺が社会問題化したのを受け、警察庁が2006年秋に全国のパチンコ台を強制撤去したそうです。この点で韓国は立派だと思います。

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