田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(65) 嫌われる内部告発
職場であまりにもひどいことが行われている時はどうするのがいいのでしょうか。その現場で「こんなことは違法なんじゃないですか」と諌めるべきですが、そんなこと、百も承知でやっている連中が聞くはずがありません。しかも、そうした人たちが組織の上層部なのです。たちまち、反抗者扱いで嫌がらせが続き、左遷され、結局は職場を追われる、というのが日本社会です。
2006年4月から、日本でも「公共通報者保護法」が施行されました。欧米の先例から政府がいやいや作ったものです。当然ながら条文も骨抜き、運用も骨抜きです。そのことを感じさせる事例が最近も相次いでいます。
2010年7月、千葉県がんセンターの女性麻酔科医が、腹腔鏡手術で死者が続いていることなどをセンター長に指摘しました。それを聞いた上司が彼女の勤務を外し、彼女はたった2か月で退職せざるをえなくなりました。翌年2月、彼女は厚生労働省にメールで告発しました。しかし、厚生労働省は、女性がすでに退職しており、保護法の保護対象にならないからと無視したそうです。
国のアルツハイマー病研究のデータごまかしで、研究者が2013年8月と11月に厚生労働省に告発メールを送りました。最初のは無視、 2度目のは責任者の東大教授にそのまま転送され、「あの野郎」となりました。
その厚生労働省は、天下り先に職業訓練事業を独占せさようと画策し、今春、報道で暴露されると、関係者を処分しながら刑事告発はせず、仲間を守ろうとしています。
いろいろあるなかで、思い出すのは2007年、北海道の偽装牛肉ミンチ事件です。元工場長が北海道庁と農林水産省に告発したものの放置され、 1年後、朝日新聞の報道で初めて
表面化しました。
組織のトップや官庁に内部告発は本当に危険です。お勧めはやっぱり報道機関。でも牛肉ミンチ事件も地元の新聞と放送は取り上げなかったそうですから、持ち込み先は吟味する必要があります。
すごい内部告発がこないかな、なんて私は今でも考えているのですが。