田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(60)国が捕鯨にこだわる不思議
南極海の調査捕鯨が中止になりました。国際司法裁判所が3月末、オーストラリアが日本の調査捕鯨を「違法な商業捕鯨」であり、国際法に違反すると訴えていたのに対し、即時中止の勝訴をいい渡したからです。判決は12対4の圧倒的多数でした。
報道では「まさかの完敗」でしたが、私は「当然の完敗」だろうと思います。一時期、南極海でクジラが減ったのも多くは日本の乱獲のせい、と批判を浴びました。クジラの保護を目的としてできた国際捕鯨取締条約では、クジラの生態を調査する「科学的研究のため」の捕鯨を例外的に認めています。その名目で25年間も続いてきた日本の捕鯨は、ひいき目で見ても商業捕鯨。それも、一部の漁港や、日本鯨類研究所を存続させる目的としか見えませんでした。ごくかぎられた原住民がクジラを捕獲しているのを除くと、捕鯨国は数カ国もなく、しかも、日本一国が世界の半数以上を獲っています。
政府は仕方なく、南極海の次回調査捕鯨を中止し、計画を縮小する方針です。一方で、北西太平洋地域での調査捕鯨は今回の範囲外として継続する方針で、先月、捕鯨船が出港しました。このことも国際的には反発を呼びそうです。日本は徹底した外交オンチ。どんな問題でも、心からの友だち国を日本の官僚や政治家は作れないでいます。
日本は昔からクジラを食べる習慣があります。欧米もかつてはクジラを獲っていたのですが、いつの間にか欧米人にとって、クジラは故意に人間に害を与えない、賢い愛すべき動物になりました。
食習慣といっても、韓国の犬料理にほとんどの日本人は嫌悪感を示します。それに、日本人のクジラを食べる習慣も激減しています。私は学校給食で立田揚げを食べましたが、クジラが美味しいと感じたことはありませんでした。牛丼や焼き肉、トンカツがずっと美味しいと思います。
日本人の何割がクジラを食べたいと思っているのでしょうか。国民投票をしたらどんな結果になるか興味があります。