医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2014年3月17日

(53)新型万能細胞の疑惑にもっと驚き

 簡単な刺激でできたという新型万能細胞のSTAP細胞に驚いていたら、写真の間違い、コピペの疑惑などが次々に出てきて、さらに驚きました。私は以前、このコラムで、STAP細胞の成功はまだマウスでの段階なので、さて人間でどうか、本当はそれ次第、というような感想を書きました。しかし、正直なところ、研究があやしい、とまでは思いませんでした。
 しかし、最初から疑義を持っていた研究者たちもいたようです。3月12日、東京で「アンチエイジング医師団」主催のメディア懇談会で、塩谷信幸・北里大学名誉教授があいさつのなかで触れていました。
 塩谷さんは「常識的にはありえない」と思ったそうです。あれだけ簡単な刺激で万能細胞ができるなら、これまでの無数の実験過程のなかで、偶然に起きることがかなりの率であったはず、と感じたそうです。
 さらに理化学研究所の発表が不自然だったというのです。普通はネイチャーに載ってから記者会見するのに、今回は掲載前だったようです。しかも、研究所が積極的に小保方晴子さんを持ち上げました。研究費狙いのような政治的な意図が疑われたそうです。研究所ぐるみのごまかしでないにしても、判断が甘くなったかも知れません。塩谷さんの慧眼に敬服します。
 理化学研究所は3月14日、記者会見し、調査委員会の中間報告を発表しました。何やら難しくあいまいな印象の会見でしたが、ネイチャー掲載の論文の写真が、筆頭筆者である小保方さんの博士論文と同じだったことは認めました。
 世界初の画期的な新事実の証明である写真が、まったく別の論文の写真だったというのは、勘違いや取り違えでは説明できません。また、小保方さんの博士論文の何十ページもが米国保健研究所(NIH) のホームページの借用だったというのも言語道断です。
 ノバルティスファーマを始め、最近の医療・研究関連ニュースはインチキばかりで、本当に悲しく、情けなくなります。

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