医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2014年3月3日

(51)派遣労働法を改正するなんて

 派遣労働が拡大されそうだ、という報道に、正直のところ心を痛めています。
 いつの間にか、私たちの回りには、アルバイトや派遣など、身分の不安定な働き手ばかりになっています。飲食店は当然として、ちゃんとした会社の事務職員なのに、実は社員は2人とか3人で、後の10人は別会社からの派遣社員、というから驚きです。また、わざわざ子会社を作り、そこから派遣の職員を送る形にしたところもあります。
 古い世代なので、派遣業者というと思い浮かぶのは、山谷の手配師です。毎日、必要な数の日雇い労働者を集めて土木現場に運び、仕事をさせ、まとめて受け取った謝礼の何割かをピンハネする商売です。
 法律違反かすれすれの業務が当たり前になったのは、小泉内閣の時だったと思います。なぜか、財界人や経済学者を集めた政府の規制改革会議という会議が、国会よりも省庁よりも強力で、いろんなことを実現させました。
 会社は、労働者をできるだけ安くこき使いたい。必要な時だけ、自由に雇い、自由にクビにしたい。それには労働関係の法律を骨抜きにする必要があります。会社は労働者を直接雇わず、派遣会社が雇い、会社間の契約にすればよい、というわけです。
 それでも現在は、秘書や通訳など26業種以外は、派遣期間が3年間でした。3年を超して働いてもらうにはその人を直接雇いなさい、ということでしょう。ところが、今回、国会に提出される労働者派遣法では、どんな業種でも、人を交代させれば、ずっと派遣でいい、となるのです。
 大骨抜きの結果、若い人たちの収入低下、未婚の増加、年金や保険の加入率の低下、将来不安などにますます拍車がかかります。ところが、2月17日の衆院予算委員会で安倍首相は「節目でキャリアを見つめなおしていただく」と、いかにも派遣労働者のためになる改正と強弁しました。ひどい世の中です。

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