医療ジャーナリスト 田辺功

メニューボタン

田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2014年2月24日

(50)あまり意味のない教育改革か

 私は医療関係の記者だったので、あまり教育関係に口出ししませんでしたが、日本の今日の低迷の大きな原因は教育制度にある、と感じることが多々ありました。
 今回、政府が教育制度の見直しを進めています。教育長と教育委員長を一本化した新教育長を首長が任命・罷免し、首長が教育行政を左右できるようにしたり、文部科学相が自治体の教育委員会に指図できる、など、首長と国の権限を強める改革です。
 教育の失敗が明らかなのは、近年の政治家や経済人の言動を、昔と比較してみると歴然です。それなのに、政治家である首長の意を重んじるというのですから、信じがたい思いです。それを提言した中央教育審議会や教育再生実行会議というのはよく知りませんが、おそらく教育者が皆無の機関だろうと思います。
 4年に1度、選挙で当選する首長が変わると、教育方針が一変する、で本当にいいでしょうか。ただ知名度があるだけ、あるいは原発の賛成・反対といった1争点だけで選ばれた知事や市長が、教育には極端な偏見の持ち主だった場合、リコールできるでしょうか。その時点での中学生、高校生の進路に影響しないでしょうか。首長の意をくむ教育委員会、校長、教頭の元で、教員はますます苦しむことにならないでしょうか。
 日本の教育は大学から問題です。大学の数が多すぎ、大半の学生は勉強などしません。何年も前ですが、私大教授をしている私の友人は「田辺君、今年の新入生は例年より優秀だ。たいてい九九がわかる」と言いました。作りたい政治家や経済人のために多くの大学が新設され、無理やり学生を集めています。
 記憶頼りの入試は、テクニックだけの塾を増やします。外国に少ない教科書の検定制度も、出題範囲を揃える目的で、本当は不要です。高校生はすぐに忘れる知識を詰め込むのに時間を使っています。理想の教育とは、覚える知識を最小限にし、その代わり、他人の意見を聞いて議論し、理解し、深く考え、正しく判断する力をつけることです。趣味や研究、読書など、自分の興味を生かし、個性を育てる教育にすれば、いじめも減ります。それで合格できる入試制度に改めたら、世の中、とても楽しくなります。
 こうした観点からは、今回の改革論議はまったくの無意味に見えます。

トップへ戻る