田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(49)続・アルツハイマー研究の告発
データ改ざんが問題になった国のアルツハイマー病研究プロジェクト「J-ADNI」は、東京大学、京都大学をはじめとする日本の代表的な病院や研究所のほとんど、38医療機関もが参加しています。一部のデータ改ざんでこれらの病院の貴重なデータが日の目を見なくなるとしたら、大変な損失です。厚生労働省はできるだけ早く疑惑を解明し、やり直す必要があると思います。
改めて「J-ADNI」のホームページを見ました。それによると、アルツハイマー病は、脳の神経細胞が脱落し始め、脳内に異常たんぱく質ベータアミロイドが蓄積する病気となっています。健康高齢者、病的な物忘れが出始めた軽度認知障害(MCI)の人、アルツハイマー病患者さんの協力を得て、脳画像、体液検査などからアルツハイマー病への進行を予知する方法を見い出そう、といった研究です。
私はとても複雑な気持ちになります。実は、私は2008年に『心の病は脳の傷』 (西村書店) を出版しました。それは松澤大樹・東北大学名誉教授 (放射線科) の精神疾患の診断と治療法を紹介したもので、アルツハイマー病も含まれています。
松澤さんは脳画像検査の専門家です。精神科からアルツハイマー病の患者さんの脳画像検査を頼まれ、アルツハイマー病は脳の神経細胞の脱落ではなく、記憶に関係する脳の海馬と扁桃体の萎縮が原因と突き止めました。一定方向のMRI脳画像で両方の萎縮を確認して診断できます。
アルツハイマー病の原因は何十年も、ベータアミロイドの沈着説、が主流でした。そうでない松澤さんの論文は複数の国際専門誌から「信じられない」と拒否されたそうですが、国内では発表しています。松澤さんはうつ病、統合失調症、アルツハイマー病の治療に取り組み、高率に治ると発表しています。一方、ベータアミロイド説に基づいて開発された第一陣のアルツハイマー病薬はいずれも無効でした。
プロジェクトの趣旨からすると、アルツハイマー病を専門とするほとんどの医師は松澤さんの仕事を知らないか、無視しているということです。紹介本を書いている私も、きっとインチキと思われているのだろうな、と思います。
医療の世界というのは本当にふしぎです。