田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(512)神宮の森の再開発に多くの反対
9月8日の各紙に東京・明治神宮外苑の再開発をめぐるニュースが載っていました。ユネスコ (国連教育科学文化機関) の諮問機関イコモス (国際記念物遺跡会議、本部・パリ) が緊急要請文書を出し、事業者に計画の撤回を求めたというのです。
文書によるとイコモスは、神宮外苑は市民の寄付と献木、ボランティア活動で作られた世界の公園史上、類を見ないすぐれた遺産」と高く評価し、事業者には超高層ビル建設などの再開発事業の撤回、東京都には都市計画の見直しなどを求めました。
神宮外苑の再開発は2015年ごろから計画されていたようです。文化遺産の専門家による日本イコモス国内委員会はすでに2018年12月以降、何度も見直しを提言してきましたが、今回イコモス本部が動き出したわけです。
事業者は三井不動産、伊藤忠商事、明治神宮など。神宮球場と秩父宮ラグビー場の場所を入れ換えて新設、 2つの高層ビルを建てます。全国から樹木が寄せられ、1926年にできた外苑は太い大木の森で、日本初の風致地区に指定されました。当初の計画ではその半分以上を伐採して若木に植え替えることになっていました。
東京都の環境影響審議会に対し、事業者側は伐採樹木数を減らすなどの対応を示しました。また、都が求めていた近隣住民への説明会も 7月に実施されました。後は小池百合子・東京都知事の判断での認可となります。
住民説明会では再開発に反対の意見が多かったようです。また、今年 3月に亡くなった著名な音楽家の坂本龍一さんが小池知事に計画の見直しを訴える手紙を出し、坂本さんと親しかったサザンオールスターズの桑田佳祐さんが再開発を問う新曲を作りました。作家の村上春樹さんも反対を表明しました。市民グループによると、歌手の加藤登紀子さん、作家の浅田次郎さん始め、俳優、文化人など78人が見直しに賛同しています。こうした多くの著名人、そして何よりも国際機関イコモスの見直し要求を小池知事は無視できるのでしょうか。
私は 2、3 年前からすぐ近くにある診療所に通っており、神宮外苑のイチョウ並木や森林はよく散歩しています。神宮外苑はてっきり国の管理と思っていましたが、実は明治神宮の管理で、神宮の苦しい経済状態が今回の再開発計画につながったと聞いています。それだったら国が年に何億円かを負担すればすみそうな感じもします。