田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(502)特定技能拡大で移民は増えるはずだが
政府は 6月9日の閣議で、外国人労働者の「特定技能 2号」の対象を2分野から11分野に広げると決定しました。特定技能は事実上は技能実習の延長線上にあり、今回の拡大で制度の形が整いました。移民を認める制度ですが、現在の日本は世界で最も移民に厳しいと見られる国だけに運用が注目されそうです。
技能実習制度は国際協力事業として1993年に創設されました。開発途上国の人が日本の技術を学んで母国に持ち帰るもので、対象は85職種で内容も細かく規定され、滞在も最長5年間です。これまでいろいろ報道されたようにこの制度は30年の間に、農業、漁業など多くの分野で目的を逸脱した単なる人手不足策になってしまいました。昨年 6月末現在の実習生約33万人のうち半数以上の18万人 (56%) がベトナムからで、インドネシア (12%) 、中国(11%) 、フィリピン (9%) を合わせて9割近くになります。ベトナムの極端な多さが気になります。
もう1つの特定技能制度は技能実習を補うような形で2019年にできました。一定の技術を持つ外国人を雇用する本来の人手不足対策で、特定技能 1号は食料品製造や農業など12分野です。技能実習生は一定の実習を終え、それが12分野の 1つであればそのまま1号に移ることができます。1号生の滞在も最長 5年です。
特定技能2号は1号生が試験などに合格する必要がありますが、2号生になれば滞在期間に制限がなくなり、家族帯同で日本に移住できます。これまでは建設と造船・舶用工業の 2分野に限られていたのが大きく広がるわけです。
入管難民法絡みで明らかになったことですが、日本は2022年までの41年間の申請に、難民と認めたのは 1%と異常な少なさです。根底には移民や難民を受け入れたくない国民か政府かの気持ちがありそうです。若い外国人の働き手の受け入れは少子高齢化社会の解決策の 1つになるはずです。
今年 3月末の1号生が15万人に対し、2号生はたった11人とか。分野拡大で急増すると思ったら、試験などが難し過ぎて 1号生の多くは結局は帰国、などとはならないでしょうね。