田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(501)よく分からない異次元の少子化対策
岸田首相が言い出した「異次元の少子化対策」が近くまとまりそうです。「異次元」とは、普通とは全く異なる考え方や発想を意味します。成果が上がらなかったこれまでの政策と違う優れた政策、が期待されています。
首相の考えのバックには「こども未来戦略会議」での「少子化対策加速プラン」がありそうです。そこでは児童手当ての拡充、保育士の基準見直しで保育園を充実、出産費用の保険適用などが議論されています。
現在の児童手当は年収1200万円未満の家庭の中学生まで、 1人5000円から15000 円が支給されていますが、年収制限の撤廃や高校生までの延長、 3人目の増額などが検討されています。保育士は 1歳児の場合 6人に 1人から 5人に 1人など増員の方向です。また、現在は自費の出産費用を保険支払いにすることも検討課題です。
こども病院の小児科の先生はそのことも心配していました。小児科は診察も検査も手間がかかり、感染症や夏休みなどで患者数も変動し、大赤字です。それを難しい出産や周産期治療でカバーしています。普通の出産の保険導入で国や自治体の助成額が大幅に増え、こども病院の存続が一層危うくなるとの懸念です。
支援策の財源ですが、当面は消費税を変えないとのことですから、他の税金や社会保険料の増額が現実味を帯びています。高齢者の保険料も徐々に上がってきており、保険料を滞納したり、医療費の支払いに困って診療を受けない生活困窮者も出ています。
厚生労働省が 6月2日に発表した2022年の人口動態統計では、出生数77万人、 1人の女性の産む子どもの数1.26人はいずれも 7年連続減少・過去最少でした。その背景として、不安定な雇用、低収入のため、結婚できない男女の増加が大きいといわれています。子育て世帯には喜ばれる支援策で結婚がどれだけ増えるでしょうか。
「異次元」は「普通と異なる間違い」の意味ではないと思いたいものです。