田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(500)マイナー保険証はもっと慎重に
与党絶対多数の国会では必然的ですが、 6月2日、マイナンバー関連法案が可決・成立しました。マイナンバーカードを保険証 (マイナ保険証) にし、これまでの保険証は来年秋に廃止することも決まりました。カードを巡るトラブルや、現行保険証の廃止反対が多いなかでの性急な政策が心配になります。
医療団体・全国保険医団体連合会 (保団連) が昨年秋に調査したところ、保険証の廃止に賛成の医療機関は8%に対し、65%が反対でした。その理由は8割が「窓口応対の増加」で、「マイナ保険証の持参が困難な高齢者対応」「システム不具合時の診療困難」が各7割でした。
保団連は5月31日時点でのマイナ保険証トラブルも公表しています。すでに運用している27都道府県の2440件のうち1556件 (63.8%) にトラブルがありました。最大の原因は、加入者の情報が正しく反映されず「無効」「該当資格無し」と表示されるケースで6割を閉めました。続いて、5割が医療機関のカードリーダーの不具合、2割がマイナ保険証のICチップの破損、の順でした。トラブルの7割は持参の保険証で確認できましたが、持参せずに無保険者扱いになり、10割負担を請求された患者は93件 (推計) もありました。また、間違って他人の情報が入っていたマイナ保険証が49件ありました。
保団連は特別養護老人ホームなど高齢者施設対象の調査もしています。現在は 8割の施設が保険証を管理していますが、マイナカード (マイナ保険証) の申請や管理は9割の施設が「対応不能」と答えています。カードと暗唱番号の管理は困難で、不正利用や情報漏れの懸念もあります。マイナ保険証を紛失すると再発行までの 2カ月ほどは無保険になり、必要な医療を受けずに重症化するなどの危険もあります。
マイナ保険証には医師がこれまでの診療や薬の記録が読める、などのメリットもありますが、医療界、介護界のこうした反対にも説得力があります。政府はもっと慎重に取り組むべきだと感じています。