田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(493)介護施設での誤嚥性肺炎減らす
80代の先生の訃報が届きました。施設に入居されていて、肺炎で亡くなったとのことです。この20年ほどは年賀状だけのお付き合いでしたが、記者時代にいろいろ教えていただいた時の得意気な顔が浮かびました。
介護施設で肺炎、というと、自然に誤嚥性肺炎を連想します。多くなったことの反映なのか、厚生労働省の人口動態統計では、誤嚥性肺炎は独立の死因になっています。2021年の死者 143万人で①がん38 (万人、以下同じ) ②心疾患 21 ③老衰15 ④脳血管10の次が ⑤肺炎 7、そして ⑥誤嚥性肺炎 4でした。⑤⑥を合わせると12で、 4位になります。
誤嚥性肺炎の予防に有効なのが口腔ケアです。歯科衛生士事務所「ピュアとやま」代表の精田紀代美さんは歯科衛生士として保健所や県庁で30年も勤務した後、独立しました。世界で最も歯磨きに熱心な日本人に虫歯が多いなどから従来の指導内容に疑問を感じたのも一因だったようです。
介護施設から口腔ケアの指導を頼まれた精田さんは、現場でいろいろと工夫を重ねました。できるだけ職員の負担が少ない方法として考案したのが、入居者の週 2回の入浴時に職員が歯ブラシ、舌ブラシで口内をきれいにする「口腔ケア週 2回法」でした。2011年まで特別養護老人ホーム10カ所と契約、「週2回法」に月1回の直接指導を加えました。すると、各施設で毎年何人かはあった誤嚥性肺炎の入院が15年からは全施設でゼロになっただけでなく、インフルエンザなどの感染症も激減したのです。刺激で舌表面から出る唾液が免疫力を高めるようです。
精田さんが広く一般に勧めている「セイダ式口腔ケア」の特徴は「舌そうじと舌筋トレ法」です。簡単にできるので、これからは施設や家庭での誤嚥性肺炎は減っていくのではないか、と期待しています。