医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2023年4月10日

(492)高層ビルの建て直しもびっくりです

 右腕の痛みで体調不調が続き、周辺にはいろいろと迷惑をかけています。コロナ対応が軽減されたのに外出などは自粛、ベッドで本や新聞を見るのが主な日課です。それにしても世の中、暗い話、困った話、驚く話、あきれた話ばかりがあふれています。
 たとえば 3月17日発表の「大成建設、ビル建て直しへ」のニュースです。ゼネコン大手の大成建設が札幌市で建設していた地上26階地下2階の高層ビルが法令の基準を満たさない施工不良と分かり、取り壊して建て直すことになったというのです。しかも、その理由が納期の遅れを危惧した同社担当者の「多少の違いがあっても品質上の問題はない」との誤った判断で、偽った報告書も作っていました。
 発注したNTT都市開発の担当者が鉄骨の穴より細いボルトが使われていたのに気づいたことが発端でした。鉄骨の柱など約80カ所にずれがあり、コンクリートの厚さは 245カ所で不足していました。
 工事は 2割ほど進んでおり、鉄骨は15階まで組まれていました。それを取り壊して建て直すために2024年2月の竣工が2年4カ月も遅れ、何百億円もの損失が見込まれます。大成建設の決断はさすがゼネコンですが、1人かごく少数のごまかしが通用してしまうのは昨今の人手不足のせいなのか、日常なのかと考え込んでしまいます。
 似たような事件も思い出します。杭の一部が固い地盤まで達していなかった横浜市のマンション事件 (2015年) 、一級建築士が構造計算書を偽造してマンション、ホテルの耐震強度不足を隠した姉歯事件 (2005年) などです。また、韓国や中国などではビルが突然崩れ落ちた事故もありました。
 地震大国の日本ではとくにビルの耐震性が重要です。東京周辺の首都直下型地震、西日本の南海トラフ地震などの可能性があります。2月のトルコ・シリア大地震で、住民を取り込んだまま崩れたビルの悲惨な情景が日本で再現されないことを願っています。

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