田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(487)有機フッ素化合物対策に注目
水を汚染する新たな公害物質として有機フッ素化合物が注目されています。2、3 年前から米軍基地などの周辺の河川や地下水から検出はされていますが、どの程度有害かも不明で、ほとんどが地域的な話題にとどまっていました。先月、環境省が対応するための学識経験者による専門家会議を設置したことや市民団体による東京・多摩地域の住民の血液検査の結果が公表されたことから大きく報道されました。
有機フッ素化合物は何と4700種類もあるそうで、PFAS(ピーファス)と総称されています。水や油をはじく性質を活用し、衣類や紙などの防水、洗剤や消化剤、フライパンやファーストフード容器、さらには半導体など多くの製品の製造工程で使われています。
問題なのは分解されにくく、水や土や生物の体内に長く残り、年を経るごとに量が増えていきます。有機フッ素化合物は水や食品から私たちの体内に入るとやはり長く残ります。PFASは発がん性などが疑われています。
市民団体「多摩地域のPFAS汚染を明らかにする会」と、京都大学の原田浩二・准教授グループは1月30日、87人分の血液検査結果を公表しました。測定したのは特に毒性が強く、世界的に規制されている4種類です。87人の平均血中濃度は、米国機関が「健康被害を受ける可能性が高い」と警告している濃度の約2倍で、最高の人は約6倍でした。
ドイツはこのうち2種類について警告しています。平均はそれを下回りましたが、87人のうち21人と6人が濃度を超えていました。
NPO法人「食品と暮らしの安全基金」は3月号の機関誌でこの件を詳しく報じています。国分寺市のTさん(75) は7、8 年前に脂質異常症と診断され、昨年、軽度の脳梗塞になりました。やせ型で運動もしていたのに不思議でした。長年水道水を使っていたTさんは4種類濃度が約3倍と高く、原田准教授から有機フッ素化合物が脂質異常の原因になりうると聞いて、ひょっとしてとの疑いを持ちました。思いもかけぬ健康被害が起きている可能性があると私も思います。
PFAS専門家会議の対応に注目です。