医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2023年1月10日

(480)介護の虐待は珍しくないけれど

 明けましておめでとうございます。2023年こそよい年でありますように。
 私にとってこの2 、3年はあまりよい年とは言えませんでした。新型コロナと直接関係はなさそうなのに、やるべき仕事が出来ず、やりたいことがかなわず、どれも中途半端に終わってしまった感じです。今年はしっかりしなければと思っています。
 昨年12月は静岡県警が保育園児を虐待したとして元保育士3人を逮捕するという信じられないような事件がありました。通園バスからの降ろし忘れは不注意としても、結果は園児の死亡につながり深刻でした。それに対し、介護施設や老人ホームでは意図的な虐待やいじめはしばしば耳にします。
 それもそのはず、12月23日に厚生労働省が発表した介護事業所職員による高齢者虐待件数は2021年度739件でした。全国の自治体や都道府県からの報告を毎年集計しており、前年595件から144件 (24%) 増えています。その内容 (複数回答) は叩いたりする身体的虐待51%、言葉によるいじめなどの心理的虐待38%、介護放棄24%でした。原因 (同) としては「教育・知識・介護技術等の欠如」56%、「職員のストレスや感情コントロール」23%、「虐待助長の組織風土や管理体制不備」21%、「倫理観や理念欠如」13%、が指摘されました。
 男性は介護職員の 2割弱なのに虐待者の半数を超し、虐待された被介護者の 7割が女性で、介護の必要度の高い高齢者が大半でした。
 厚労省は家庭で介護・虐待された高齢者も調べています。21年度は施設の20倍超16809 人でやはり75%が女性、虐待側は息子39%、夫23%、娘19%、妻 7%の順でした。介護に対する男女の認識の違いが読み取れます。
 家庭での虐待の原因として、高齢者の認知症、介護者のストレスや疲れ、介護者の精神状態不安定、両者の人間関係、が半数前後に見られます。介護者による殺人が13件、心中が2件起きています。
 高齢者介護の虐待を減らすため、市町村は啓発したり相談に応じる窓口を設け、指導や関係者の研修などを実施しています。しかし、21年度に虐待していた施設の 2割は過去にも虐待をし、指導を受けていました。
 高齢者に優しい介護、も追究したい今年の課題の 1つです。

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