田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(475)保険料の引き上げは不安です
10月から後期高齢者医療保険の窓口負担 (自己負担) が変更になりました。それまでは所得がある程度以上の人はかかった医療費の3割、それ以下の人は 1割でしたが、所得額に新たな線引きをし、1割のままの人と2割負担の人に分けたのです。後期高齢者の約2割が新たに2割負担になります。
1割から2割となると、同じ医療を受けながら窓口での支払額は倍増です。そうなると医療現場での大混乱は避けられません。政府や保険者はその対策として 3年間は増加額の上限を3000円とし、窓口で一端払った負担増加額から3000円を引いた額を払い戻すことにしました。なかなか巧妙な方法です。負担倍増だと受診控えが増え、重症化する患者が増えるところですが、いずれ返金されると思えば我慢できます。そうして医療費の倍増に少しずつ慣らされていきます。
厚生労働省は後期高齢者の保険料そのものの値上げ案を11月17日の社会保障審議会に提示しました。保険料を平均で年約4000円、上限額も年66万円から80万円に上げます。
高齢者の払っている保険料は実は医療費の1割だけで、5割が国や県の公費、 4割が企業などの健康保険から出ています。厚労省は医療費の増える分を若い人たちの保険からでなく、高齢者の保険料でカバーしたいと考えているわけです。
似たような話ですが、厚労省は10月31日の審議会には65歳以上の高齢者が負担する介護保険料の見直しも求めました。2022年の介護保険費用は始まった00年の3.7 倍。しかも、介護分野は重労働で低賃金、人手不足から、費用の増加が必然視されています。利用者負担を現在の1割から2割に倍増、高所得者の保険料の値上げ、負担年齢を下げる、などが議論されそうです。
考えて見ると後期高齢者保険や介護保険に国がどんどん税金を投入すれば済む話です。それがなぜか日本政府は国民のための福祉関係より、企業や自衛隊、裕福な人たちへの出費を重視しているように見えます。消費税が日本より高いとの批判もありますが、英国を 始め欧州の多くの国は医療費のほとんどが公費負担になっています。