医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2013年10月7日

(31)乳歯で測る放射能汚染

 自然に抜けた乳歯で子どもや家族が浴びた放射能を測る、という話をお聞きになったことがありますか。10月5日、私は千葉県松戸市で開かれたシンポジウム「放射線と歯のはなし」の司会をさせていただきました。
 主催の「乳歯を保存するプロジェクト」グループの中心が歯科医の藤野健正さんです。東日本大震災による福島第一原発事故直後、 松戸市で放射能のホットスポットが見つかりました。放射性物質の「ストロンチウム90」は骨や歯にずっと蓄積しています。生えかわって抜けた乳歯を調べれば、子どもたち、ひいてはそのお母さんたちの被ばくがわかるはず、ということになります。
 藤野さんによると、ストロンチウム90は妊娠14週から19週の時期にカルシウムと一緒に取り込まれます。それが 6歳から10歳、12歳ぐらいまでに次々に抜けてきます。プロジェクトにはすでに350 本ぐらいの乳歯が届いていますが、これらは原発事故以前にできた歯です。測定を引き受けてくれたスイスのバーゼル放射線研究所によると、24本の分析段階では20本は検出限界以下、4本が微量ながら出ています。
 「原発事故後の乳歯が抜けるのは数年後からなので、息長く運動を続けたい。貴重なデータになる子どもの乳歯は捨てないで」と藤野さんは訴えていました。
シンポジウムでは、プロジェクトの協力者でもある専門家 2人の講演もありました。放射線科医である岐阜県環境医学研究所の松井英介所長は、チェルノブイリ地区やビキニ核実験などを例に放射能によるさまざまな健康障害について話されました。原発の危険性がいろんな形で浮き彫りになりました。福島原発周辺の立ち入り禁止区域では、東北大学グループが牛や豚、野生動物の放射能調査を進めているそうです。歯科医として参加されている篠田壽・東北大学名誉教授は牛や豚の歯の放射能の測定法やデータを話してくださいました。歯に蓄積した放射能と他の臓器への蓄積や障害の関係が動物ではっきりわかれば人間でも類推できそうです。     

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